滴翠美術館は大阪財界で活躍した山口吉兵衛氏の住まいを没後にコレクション公開のために改装し氏の雅号であった「滴翠」を関して開館した美術館です。
徳川将軍家の茶道指南役を務めた小堀遠州(1579~1647)、松江藩中興の祖にして茶道具の格付に功を挙げた松平不昧(1751~1818)、両者は江戸時代を代表する大名茶人として知られています。吉郎兵衛愛蔵のコレクションの中には両者の好み、手造り、または藩窯の作品が遺されており、遠州が確立した綺麗さびの美意識そして名物を選り分ける不昧による審美眼の世界の一端をご紹介致します。
口径2.7cm 胴周径15.4cm 高12.6cm 16-17世紀 滴翠美術館蔵 きめ細かい胎土を薄く轆轤(ろくろ)を挽いた細長形の丹波茶入。なだらかな轆轤目が美しく、肩からの捻り返しは3ミリほどで、随所に技巧がうかがえる。鉄釉が掛かり、轆轤目の凹凸に応じて、凹は黒色が、凸は茶褐色が勝る縞模様が見所。また肩から一筋の釉なだれが景色を成している。遠州銘「花葛」を自署した挽家も揃う。
口径3.2cm 胴周径19.0cm 高7.5cm 16-17世紀 破風窯 滴翠美術館蔵 中興名物に玉川茶入があり、本作も同様に、茶入の景色から「駒とめて なほ水かはむ 山吹の 花の露添ふ 井出の玉河」の歌を引用して「山吹」と遠州が銘をつけている。また本歌と同じく、遠州筆の和歌色紙の掛け物と挽家が添う。 硬く焼き締まった赤土胎土に瀬戸釉を掛けており、形は裾にかけてやや膨らんだ下膨れの撫肩衝。正面の肩より黄釉が流れ、その周りを黒飴釉が囲んでおり、釉景に富んだ意匠を見せている。
縦35.0cm 横5.6cm 紙本墨書 1605-1673年 滴翠美術館蔵 藤原俊成が詠んだ和歌(新古今和歌集)を遠州が色紙に書いたもので、山吹茶入に添って伝わったもの。 駒とめて なほ水かはむ 山吹の 花の露添ふ 井出の玉河(馬を留めて、また水を飲ませよう。山吹の花の露がこぼれ落ちる井出の玉河で)
箱書:藪内家五代 不住斎竹心紹智、藪内家八代 真々斎竹猗紹智、藪内家十代 休々斎竹翠紹智
胴径10.2~11.5cm 高27.9cm 1579-1647年 滴翠美術館蔵 小堀遠州自作の竹花入。尺八とは、根の方を上にした逆竹を用い、節を真ん中より下に残し、後方に釘孔を開けた花入の一種で、花窓はない。迫力のある太い寸胴形をしており、裏に遠州が金泥で「打出 宗甫 花押」と銘をつけている。藪内家歴代3名の箱書が遺る燕庵伝来の名品。
歌銘「つつじ咲 双ヶ岡の松かげにおなじ夕日の 色ぞうつろふ」 口径3.2cm 胴径6.5cm 高9.6cm 17世紀 滴翠美術館蔵 撫肩に二つの耳を付け、胴長で甑(こしき)の無い茶入。マット調の茶褐釉を裾まで掛け、肩より黒飴釉を流している。マット地にツヤのある長短をつけた二筋の釉なだれを見せた趣ある置形をなしている。松平不昧による歌銘が添えられている。
胴径10.7cm 高35.0cm 1751-1818年 滴翠美術館蔵 松平不昧自作の竹花入。三節の竹を用い、上部に一重の花窓を切った一重切で、上部の節に開けられた輪の形が桜の花にも見え、不昧の意匠性が感じられる。後部に金泥で「白雲」、墨で一々斎の花押を不昧が直書している。
縦19.5cm 横50.8cm 1751-1818年 滴翠美術館蔵 不昧自筆の扁額で、梅花小舎と彫り、胡粉で埋めている。不昧書己と宗納の瓢箪印があることから、剃髪し江戸大崎の下屋敷において隠居した以後のものと考えられ、その大崎苑にあった数多く造られた東屋の一つに掛けられていたものと思われる。
吉兵衛氏のコレクションのなかには遠州と不昧ゆかりの作品が遺されています。遠州が確立した綺麗さびの美意識、不昧の名物をより分ける審美眼の世界をたのしめる展覧会です。第2展示室では後水尾天皇ゆかりの修学院焼の展示もあります。
滴翠美術館 〒659‐0082 兵庫県芦屋市山芦屋町13‐3 TEL.0797‐22‐2228 会 期:2019年9月10日(火)~12月8日(日)開館時間:午前10時~午後4時(入館は3時30分まで)休 館 日:月曜日 入 館 料:一般630円/高大生420円/中学生以下無料 ※団体割引15名様以上2割引、その他各種割引有 アクセス:[電車] 阪急芦屋川駅より北西へ徒歩8分 、JR芦屋駅より徒歩約15分又は阪神芦屋駅より徒歩約25分 [お車] 阪神高速道路芦屋出口より10分