此度の令和七年の宗実家元、新年御好みの茶碗は、氏の二度目の挑戦となります。意欲という歩調を止めず氏の活躍は周知のごとくです。制作にいたってはお家元のご指導のもと、まずは土を古朝日のものに近づけるため、鹿背土に鉄分の濃い土を混ぜ、器形は杉形に、また、釘彫と大小の箆目の入れ方を工夫することで、岩と岩を注連縄が繋ぐ御題「夢」の架け橋を想起させる意匠にしました。また、内部は大胆に刷毛目を入れ、深く切り込んだ高台に釉薬が滴るような釉景色が風韻を醸し出しています。試行錯誤を繰り返しながらも、造形と焼成技術が心技ともに開花した作品といえます。